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「神様2011」川上弘美 講談社

神様 2011

神様 2011

こないだ、病院帰りの電車の中で読んだ。
93年に発表された川上弘美のデビュー作「神様」と、3月11日以降を描いた「神様2011」を収録。
「神様」は、くまに誘われて散歩する女性の視点から、ほのぼのと描かれた、ちょっぴりファンタジックで、微笑ましい掌編。確か昔、読んだことがある。本当に短い話だけど、川上弘美のエッセンスに溢れた、佳作。
これが3月11日を経てどうなるのか。「神様2011」。すぐに読めるので、是非読んで欲しい。日本はもう、変わってしまったのだ。そしてこのままではいけない。これから、変わらないといけないのだ。
あとがきも考えさせられる。「静かな怒りが、あの原発事故以来、去りません。むろんこの怒りは、最終的には自分自身に向かってくる怒りです。」まさにその通りだと思う。今の日本をこのような状態にしてしまったのは、他ならぬ自分たちなのだから。
高度経済成長以降、日本はひたすら上を目指す方法論で生きてきた。90年代バブル崩壊の後、その上昇志向を方針転換しなければ、本当はいけなかった。でも日本はそれをしなかった。政治も経済も、何故か供託して、ひたすら50年代から70年代の方法論、力学で突き進んできた。その結果が、この事態を招いていると思う。
そして未だに政治は停滞。旧態依然とした政治家が、政治家よりも遙かに勉強の出来る官僚(公務員)や、お金をもらっている利権会社のいいなりになったままだ。そして相変わらず政治家や電力会社は、原発事故は収束に向かっている、なんて、嘘をついている。
しかし、今回の震災、原発事故で、一部の日本人は少し目覚めた。と思いたい。ただひたすらに、上を目指すだけでは、たち行かなくなるということを。
無職で病気持ち、いつまで生きているかわからないような自分が何ができるってわけではないけどさ、でも、これからも原発事故のようなあってはならない、悲劇的な事態が2度と起こらないようにするためにはどうすればいいのか、考え、議論していかなければいけないと強く思った。まずは単純に、原発をなくしてしまえばいいんですけどね。