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「ジョーカー・ゲーム」柳広司 角川書店

ジョーカー・ゲーム

ジョーカー・ゲーム

スパイ養成学校「D機関」の異能たちを描いた短編集。これは素晴らしい。
文章に無駄がなく緊張感に溢れる。改行をなくして密度を増やすのではなく、行間から濃密さをかもしだしている。
「異端」であるはずのスパイ組織の方が、「本流」の軍隊よりも柔軟で間違いのない行動規範と精神を持って活動していたという皮肉が、なんだか現代にも通じるようで、ちょっと怖くもなる。
「D機関」を束ねる結城中佐そのものについては、超人的でミステリアスである以上には伝わってこない。何故彼ほどの傑物が日本にとどまり続けるのか、ちょっとした疑問として残る。いつか別作品として彼の過去を読んでみたいです。