The workers are goin’ home

SEのブログです

「犯人に告ぐ」雫井脩介

小説の柱である「劇場型捜査」をはじめ、基本的には現実的にありえない展開。だけどなんか紙一重であってもおかしくないな、と思わせる妙な説得力が魅力。この作者の「虚貌」も「火の粉」も、同じような感じで、ありえないような話を、現実世界のリアリティーと絡めてぐいぐいひっぱる。とにかく上手い。例えば、序盤から、主人公の刑事がマスコミ相手にキレてしまう。こんなアホな刑事はいない。でも、切実な気持ちが伝わってきて、なんだか納得させられてしまう。ラスト近辺はちょっとあっけないけど、文句なし。お見事。「微苦笑」という言い回しがやたら登場したり、句点もないまま「これ」「それ」が重なったり、ちょっと気になる点はあったけど、まぁ細かいことはどうでもいいですね。
これだけ読ませるサスペンスを書ける作家は、そうそういない。
「生首に聞いてみろ」と、「犯人に告ぐ」。それぞれ「このミス」「文春」の1位だったわけだけど、町田近辺が舞台になっている。