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「繋がれた明日」真保裕一 朝日文庫

今週の読了本。
6年で仮釈放されながら、終始、「俺は悪くない」「相手にも非がある」と思い続ける主人公には、共感できない点も多い。でも、実際ここまで誠実な人間はなかなかいないとも思う。心情を丁寧に描いているので、さほどサスペンスフルな物語ではないが、引き込まれ、じっくり読まされる。
ラスト近くの展開が急で強引な気もするけど、難しい物語をきれいにまとめあげているあたりはさすが。
被害者たちが、皆ちょっとエキセントリックなキャラクターに描かれていたのは、ちょっといただけない。実際は、もっとひそかに、苦しみ、耐え続ける人たちもいるはずなのに。また、加害者の社会復帰が大変なのもわかるけど、被害者の身内も、何も悪いことはしていないのに、周りの興味本位の哀れみの視線や、いわれのない誹謗中傷など、塀の中で守られているわけでもなく、もっと大変なことが多いはず。その悲しみと怒りが、伝わる描き方にしてほしかった。まぁそこまで書いていては大河長編になってしまいそうだけど。