The workers are goin’ home

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「空気人形」@シネマライズ


これは、年に一作観られるかどうかの、傑作ではないか。
本来持ってはいけない心を、持ってしまった空気人形(ダッチワイフ)。
満たされないのは身体だけなのか、そして自分だけなのか。
そもそも空っぽって、何なのだろう。溢れる欠如は、どうしたら満たされるのだろうか。本来なんでもない、ただの空気。その空気だけでも、満たされるものがあるのではないか。そして空気があっても、世界がそこにあっても、他者との交わりがあっても、満たされない孤独って、あるんじゃないのか。
ARATAが萎んでしまった人形ペ・ドゥナを膨らませる、その倒錯したエロっぷりでは映画史上でも最高レベルではないかというシーンには、参りました。
人形が、心を持ってしまった。しかも、物語の終盤には、哀しみまで知ってしまった。切なさ溢れるラスト。
途中引用される長田弘の詩も、実にいい。
素晴らしい作品です。
ただ、日々充実していて気力みなぎっているような人が観ても、何とも思わないかも。
ちなみに業田良家の原作も、20ページほどですが、傑作です。